ニッポン消費者新聞2010年7月15日付

2014年11月1日


決済代行
サギ的商法を助長 規制なく苦情急増
割販法の“抜け穴”
“キャッシュレス時代”の決済方法としてクレジット利用が拡大しているが、その決済を代行する「決済代行業者」が絡んだ消費者トラブルが急増していることから、消費者委員会は規制措置を講ずる場合の方策について検討を開始した。決済代行会社は悪質販売業者がクレジットカード会社と加盟店契約を結べないことを背景に、当該販売会社に代わってカード会社の加盟店となり、販売会社にカード決済を利用させることを可能とする。結果的に悪質商法の横行が野放しとなる。改正割賦販売法などの規制が及ばない分野とされ、“法の抜け穴”として問題視されている。海外カード会社の加盟店として決済代行業者が決済する例も多く、外貨建てで決済され、外貨を円換算したクレジット利用明細書が届いて初めて消費者が気づく例も多い。事例の中にはサクラサイトなどの出会い系サイト、懸賞サイト、情報商材などのインターネット利用の販売に目立っている。消費者委員会は今後意見表明や建議などを検討していく。
決済代行業者は、クレジットカード会社と販売会社やモール業者との間で、カード決済の手続きなどの業務を代行する。
これら代行業者はクレジットカード会社と加盟店契約を結んでいるが、悪質な販売会社の場合は、カード会社の審査をパスして加盟店契約を結ぶことができない。そこで決済代行業者提携して決済を代行してもらう。これによって悪質販売業者はカード会社と加盟店契約を結ばなくてもカード決済が利用できるようになる。これはカード会社による加盟店管理業務の仕組みを機能させないことをを意味し、悪質商法の野放しにつながっていく。決済代行業者は割賦販売法の対象外とされ、“法の抜け穴”と指摘されている。
7月9日、消費者委員会はこのような決済代行業者が絡んだ消費者トラブルの増加を踏まえ、被害の防止と救済へ向け、どのような措置規制が必要か、検討を開始した。実際のトラブル例について国民生活センター、日本消費アドバイザー・コンサルタント協会(NACS)、全国消費生活相談員協会などの担当者にヒアリングを実施し、意見を聴いた。
国民生活センターは、決済代行業者が絡んだ苦情事例には、「出会い系サイト」や「情報商材」に関するものが目立っているとする。「情報商材」はネット通販を通して売買されるもので主にPDF形式で送付される。単なる情報ではなくその情報を使って効果を生み出す商品として販売する。例えば、「毎日一万円を稼ぐ方法」「実践的プログラム」「確実・絶待に収入が得られる方法」などの広告で消費者を誘引する。
だが、広告には販売者の体験談が延々と記載されている例が多く、消費者は情報商材の中身を知らずに購入する。結果として「全く収入が得られない」「効果がない」などの解約トラブルに。国民生活センターによると、この商法では現金払いとクレジットがほぼ半々。このクレジット決済に関与するのが決済代行業者。同センターはその絡みの事例が目立っているとし、
「消費者はモール会社やカード会社が見えているだけで、決済代行の複雑な仕組みが理解できないまま契約している。解約トラブルが発生し、カード会社に対処を求めると、“モール会社は知らない、加盟店管理の対象ではない”として対応しない。決済代行業者には海外の会社もあり、現状ではトラブル解決は難しい」
登録制・加盟店管理義務
「被害は拡大、早急な法整備を」 消費者委検討着手
NACSは、決済代行業者が絡んだ消費者トラブルは2009年度から急増しているとする。昨年11月に実施した「カードなんでも110番」に寄せられた苦情例を示し、
「出会い系サイトや情報商材、占いサイトを利用したらクレジットの高額請求を受けたという相談が寄せられた。この取引に関係する決済代行業者に対しては法的規制の根拠はなく、解決が困難。海外のアクワイアラー(カード会社)を通して決済されるため、複雑な仕組みを消費者は理解できない」
海外のカード会社を経由して、VISAやマスターカード、JCBなどの国際ブランドを通した契約では、決済は外貨建て。NACSによると、
「消費者は決済代行業者の存在を全く認識できない。カード利用明細書の中にドルなどの外貨で円換算した金額が請求されているのをみて初めて“何だこれは”となる」
利用明細書によって、知らない利用先でドル建て決済していたことに驚く消費者・・・。この海外経由の決済では、カード発行会社(イシュアー)をはじめ、販売業者と提携するカード会社(アクワイアラー)、販売業者とアクワイアラーを取り次ぐ決済代行会社、さらに、イシュアーとアクワイアラーを結ぶ国際ブランドが関係する。NACSは、
「消費者が明確に見える取引となるような法規制が早急に求められる。クレジット取引を有効に使える仕組みを早く整備することが必要」
イシュアーの異議申立てによってアクワイアラーから既払い代金を取り戻す手続きである「チャージバック」についても、
「現在は国際的な業界ルールであって、全てに適用されているわけではない」
不十分性を指摘した。
全国消費生活相談員協会(全相協)は、今年5月に実施した「クレジット110番」に寄せられた苦情事例を紹介。代表例として、
「パソコンで出会い系サイトに登録。何十人もの相手と地元で会う約束をした。いずれもキャンセルが続いた。ニ~三ヶ月で連絡が途絶え、次の相手を見つける繰り返しで二年が過ぎた。ポイントはクレジットカードで決済代行業者に払う方法。現在、リボ払いの残債が百万円。これ以上払いたくない」
全相協ではこれは“サクラサイト”による詐欺的商法と指摘する。
行ってもいないフランスで利用したカード代金の請求が来たという苦情も。
「カードを手元から離したことはなくフランスにも行っていないのに口座から引き落とされた。カード会社に申し出たが、“対処できない、販社に問い合わせて”と言われた。決済代行会社と思われる利用店の電話番号を教えられ、電話したがつながらない。カード請求明細には利用都市がフランス。ネット経由での海外での契約と言うが利用した覚えはない」
全相協が開設する土日の「週末電話相談」にも出会い系サイトをはじめ、懸賞サイトから出会い系サイトに誘導されて被害にあった事例が目立っているという。全国で発生しているが「心の病」を抱えた消費者の被害。代表例は
「躁うつ病の姉が携帯出会い系サイトの高額利用料を家族のクレジットカードや通帳を利用して支払っていたことがわかった。就寝中に父母や私のカードをバッグから出し番号を控えて支払い手続きをしたらしい。姉は3月に総額七百万円にもなる高額支払が判明した後、入院した」
支払った利用料の返金は可能か、という苦情相談。事例には決済代行業者が関与しており、解決は困難を極めるという。
全相協では、決済代行業者が関わるクレジット決済の相談では悪質商法の被害が目立つ、悪質販売業者には振り込め詐欺と同様に消費者を欺く手口を使う業者が多い、決済代行はクレジットへの介在だけではなく、電子マネー発行会社、コンビニ収納代行、代金引換契約など多くの決済方法への代行サービスが存在している、などと説明。国の認可・登録制度もなく、簡単に誰もが決済代行業者になれることから、「早急な法的規制措置を講じるべきだ」と指摘した。
消費者委員会では継続して調査し、意見表明や建議検討していくという。



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