情報商材とは耳なれない言葉かもしれないが、ここでは、インターネット通販を通じて売買される、それ自体に金銭的価値を伴う情報を指すこととする。簡単にいうと、“世間にあまり知られていない儲かるための情報”などがそれだ。
情報商材は玉石混交だが、情報そのものが商品であるため、開けてみるまで内容のよしあしを判断しようがない点に、取引の難しさがある。
被害事例
登録制のメールマガジンに、「確実に年間1000万円稼ぐ方法」という広告を見つけた。広告にURLが載っていたので詳しく見ようとクリックすると、成功した人の声や「返金保証あり」の文字がある。とりあえず返金保証があれば安心だと思い、5万円をクレジットカードで支払った。
数日後、情報商材の販売業者から冊子が届いたので、書かれていた内容を早速実行に移してみた。しかしまったく儲からない。返金してもらおうと販売業者に問い合わせてみたが、返金条件に当てはまらないので応じられないといわれた。
対策
今回は「通信販売」の一形態であるネット通販での購入なので、クーリングオフは対象外。しかし、返品をめぐるトラブルが増えたことから、昨年12月に特定商取引法が改正され、「返品特約」が設けられている。「返品の可否」「返品の条件」「送料の負担」について表示されていない場合は、商品を受け取った日から8日間、送料を消費者が負担すれば返品できることになったので、確認してみるとよい。
ただし、情報商材がPDFファイルやメールで送られてきた場合は、返品特約の適用外となる。返品特約は商品を対象にされたものだが、PDFやメールは情報、すなわち役務(サービス)と分類されるからだ。また、有料メール交換サイトで使用されるポイントなどの場合も同様の理由で適用外となる。
しかし、ネット通販の場合、これら交渉自体が難しい場合も多い。特定商取引法上、通信販売を行う業者は、業者の氏名(名称)、住所、電話番号などを表示しなければならない。ところがネット通販業者の中には、こうした表示をしていなかったり、表示していても架空のものだったりするところがあるからだ。問題が起こると行方をくらましてしまう、確信犯的な業者もある。
こうした場合、プロバイダにも責任があるのでは、と考えるかもしれない。事実、「プロバイダ責任制限法」という法律もある。
しかし、これは名誉毀損や著作権侵害、プライバシーの侵害など、サイトに情報が流れただけで第三者に被害が及ぶ場合にのみ適用される。つまり、虚偽の名称や住所などの表示はそれだけではなんの害ももたらさないため、現状では取り締まられることがない。
また、そもそも取引した通販業者が表示違反で行政処分になったからといって、それを理由に返金等をしてもらえるわけでもない。このような、規制違反に対する行政処分が被害者救済につながっていないという問題については、消費者庁が解決に向けた制度の設定を検討中だ。
返金保証があれば、それを理由に交渉を進めるのもよい。ただし、返金保証の条件を満たすのは困難なことが多いし、連絡の取りようがない業者もあるのは前述したとおりだ。
アフィリエートとは、提携先の商品広告を自分のウェブサイトに掲載。サイトを閲覧した人がその広告を経由して商品の購入などをすると、売り上げの一部が得られるというもの。
一方ドロップシッピングとは、自分のウェブサイトに商品を掲載。申し込みがあった場合は、業者が契約するメーカーや卸業者が、直接申込者へ納品するというもの。売値と卸値の差額が利益だ。不況が続き、副業を求める人が増えているのか、これらビジネスに関する相談件数が増えている。
被害事例(1)アフィリエート
家事の合間にできる仕事を探そうと在宅ワークのウェブサイトに資料請求したところ、業者からアフィリエートの電話勧誘があった。「指示どおりに簡単な作業をすれば、寝ているあいだにもおカネが入る」「最初の稼ぎは少なくても、徐々に収入は上げられる」という。
ただし、アフィリエートをするにはウェブサイトを作らなければならず、その代金70万円を業者に支払う必要がある。いわば初期投資だが、自分で店を出すとなれば普通もっとおカネがかかるし、これからの収入を思えば安いものだといわれ、契約した。
サイト完成後、業者の指示を受けながら商品の広告を掲載してみた。しかしまったく収入にならない。話が違う。
被害事例(2)ドロップシッピング
「副業」などのキーワードでインターネットを検索し、見つけた業者に電話してみた。すると、「当社が作成したサイトで商品を売れば、高収入が約束される」「ブログを書いたり、お客さんからの問い合わせにしっかり対応すればよく、難しいことはない。サポートもする」といわれたので、130万円支払ってサイトを立ち上げた。
しかし思うようには売れず、収入は月1万円程度にしかならない。サポートするといっていたのに、有効だと思えるアドバイスも得られない。より専門的な指導を受けるには、別途料金が必要だという。解約できないか。
対策
これらのケースは、特定商取引法の「業務提供誘引販売取引」に該当する可能性があり、その場合、契約日を含む20日間はクーリングオフができる。
また、事例(1)は「指示どおりに簡単な作業をすれば高収入が得られる」という部分が、事例(2)は「高収入が約束される」という部分が、特商法の「不実の告知」に抵触する可能性もあり、契約の取り消し自体を主張できる可能性もある(Part2で既述)。
アフィリエートやドロップシッピングは、どちらも業者が多数存在する。提供しているサービスなどもさまざまで、サイトの作成などに、上記の事例のような高額な請求をしない業者もあるという。
もし、サービスなどの提供に高額な費用が必要だといわれたら、契約する前に、他の業者と比べてどこに優位性があるのかよく検討する必要がある。また、サポート体制や返金保証があるといわれた場合は、その言葉のみで安心せず、詳細を事前にしっかり確認しておくべきだろう。
「簡単に稼げるビジネスなどそうそうない」ということを念頭に置き、甘い言葉に惑わされない冷静な判断が必要だ。