日本弁護士連合会コンピュータ委員会
副委員長 岡田 崇 弁護士

2015年1月2日

通用しない「場所貸し」の言い逃れ。インチキ情報商材を販売したモールにも賠償責任があるー

—悪質商法で売主以外の管理責任等が問われた例は?

 割賦販売の悪質商法では、信販会社が加盟店管理を怠ったとして裁判で責任を認定された例として、宝石のココ山岡事件や布団のモニター商法、デート商法など多数あります。苦情が入っているのにずるずる決済を続けたのは加盟店管理を怠っているということです。

—情報商材販売モールの場合商品内容を把握しているのだから、なお更責任は逃れられないということですね。

 そうですね。しかも信販会社と異なり、在庫の管理や商品の引き渡しも行っているのですから、先ほども申しましたように売主かどうかについては個別の事情によるところがありますが、少なくとも販売者と共同して責任は負う立場にはある、そんな感じの理解でいいんじゃないですか。まあ、共同売主というのもありえますから。

—最近の情報商材販売モールは社会的批判や摘発を逃れるために「商品審査を行っている」と宣伝しています。つまり、彼らは管理責任を果たしているという表面的なアピールをしているのです。しかし一向に誇大広告はつづき、販売者を訪ねると駐車場だったり私書箱だったりという状況が続きます。このような見せかけの対応が許されるのでしょうか。

 ここはポイントじゃないかな。商品内容を点検しようと思ったらできるし、実際に審査をやっていると言っているんだから、実際には広告に書いてあるような商品価値がないということが分かると。なのに不実告知を見過ごして何もやっていないと。
販売者の所在を確認していると言っても、実際に通知書を送って届かなければ本人確認が不十分だと言える。いくら業者がアピールしても管理責任を果たしたことにはならないでしょう。管理不十分によって、消費者がもたらされた被害は、弁済する必要があると請求することは可能ですね。

—アフィリエイトを利用した詐欺商法についてどう思われますか?

 アフェリエイターの方がむしろ売主よりブログやメールマガジンで誇大な宣伝をしているんじゃないかというケースも多いんですよ。そうなってくると共犯的な、民事で言えば共同不法行為の成立は免れないんじゃないかな。
そもそも、このアフェリエイト報酬が50%だ80%だなんていうシステムが問題。なぜかというと、これ、マルチ商法と同じなんですね。多額な報酬に目がくらんで大袈裟な勧誘をするというところ、売主の側からすれば、多額の報酬をエサに大袈裟な勧誘をさせるところ。
マルチの場合は「強引な勧誘」という要素が加わるんだけど。だいたいアマゾンとか一般的なアフェリエイトのシステムは報酬は商品価格の数パーセントとごくわずかなはずですね。だから報酬がこれほど高額だと、商品自体が全く価値がないというのを自ら認めているようなものだもんね。

「マルチまがい」の情報商材アフィリエイト

—情報商材のアフィリエイトも、マルチ商法とかなり似た面がありますが、特定商取引法で取締れないのでしょうか。

 マルチ商法を法律的には連鎖販売取引といいますが、要件が細かくあるので、現行の法律でアフィリエイトを連鎖販売取引とすることは難しいと思います。
アフィリエイトの問題はいろんなところで話題になっているので、特商法を改正するとか新しい法律を作るとかいずれ法規制を受けるんじゃないかな。アメリカのFTC(アメリカレント法取引委員会)が平成21年10月5日「広告に関するガイドライン」の改訂を発表したのですが、製品やサービスを薦めるブログ記事や口コミ情報を書いて報酬を受け取った場合、それを明らかにすることを義務づけているそうです(http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20091007/338500/)。こういう広告規制のような形で法の網をかぶせることもできると思う。

—まさに「マルチまがい」なんですね?

 そう、「マルチまがい」「詐欺まがい」。

—繰り返しになりますが、アフィリエイトを連鎖販売取引として取締ることはできないのですね。

 アフィリエイターは商品の購入を義務付けられていませんので、特定負担を負うとはいえません。連鎖販売取引の場合、組織に入る為のお金が必要ですが、アフィリエイトにはその必要がありません。だから「まがい」です。

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