インターネット消費者被害対策弁護団
事務局長 弘中 絵里 弁護士

2014年11月25日

インターネット消費者被害対策弁護団 事務局長 弘中 絵里 弁護士

消費者が返金を果たす上で法律的な武器はたくさんある。

—早速ですが、情報商材(情報教材)詐欺の被害者が法的に損害を回復する方法、支払った代金の返金を受ける手立てを教えてください。

 情報商材販売モール、コンテンツの販売者、アフィリエイター、この3者を共同不法行為を援用して民事的な追及をするのが一番いいと思います。

—共同不法行為とはなんですか?

 民法719条です。
 条文は「1.数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。2.行為者を教唆した者及び幇助した者は、共同行為者とみなして、前項の規定を適用する」というもので、情報商材の被害態様に照らしてもっとも攻めやすい法律構成だと思います。

——一度に3者を訴えるということですか?

 必ずしも3者を訴える必要はないのですが,3者が共同して損害を与えているということを問題にするということです。
例えば振り込め詐欺と同じです。裏で指示する人がいて、電話をかける人、ATMでお金を引き出す人がいて、みんなで一緒になってひとつのスキームを完成させるわけですよね。それと同じ理屈です。

 共同不法行為というためには、客観的な関連性と主観的な共同にあるという要件が必要なわけですが、そこは立証の問題です。共同不法行為の場合は一人でも共同不法行為者の中に支払い能力があれば、被害者は支払い能力がある者に全額請求することができるのです。
たとえば3万円の情報商材を買ってしまったと。では、販売者の売上が50%で、アフィリエイターの報酬が40%、情報商材販売モールの手数料が10%だとして、この人たちの取り分が50、40、10だからその比率でしか請求できないかというと、そんなことはないのです。共同不法行為の場合3万円をどこから取ったっていいんです。そういう点でも実効性が高いと思われます。

——情報商材の販売者の中には、情報商材販売モールと同一の住所に事務所を構える者がいたり、情報商材販売モールの元役員や元従業員など実質的に緊密な関係にある場合があります。さらに情報商材販売モール自体がアフィリエイトをやっているケースもありますし、そういう場合は関連性の立証になるのですね?

 情報商材販売モールと人為的な関連性のある会社や人物が行っているのだったらそれは関連性を裏付ける有力な証拠だと思います。

——最近は情報商材が詐欺商法として問題化してきたのでどの情報商材販売モールも「商品審査」をうたっています。他方、客から苦情が出ている詐欺的な商品を情報商材販売モール自らがアフィリエイトや宣伝を行うような矛盾行為を平然と行っています。このような事情は共同不法行為を問う上で消費者に有利な影響をしますか?

そうですね。詐欺会社の広告や記事を掲載していた有名経済誌を発行する出版社に対して、詐欺事件の被害者が訴えたことがあり、裁判では原告の訴えが退けられました。
しかし、その判決で裁判所は広告内容が虚偽であることが読み取れるなど広告内容の真実性に疑念を抱くべき事情があれば、広告を出さない義務があると判示したのです。
商品の内容を確認した上で詐欺的な商品を宣伝すれば責任の追及はしやすいです。

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