日本弁護士連合会消費者問題対策委員会委員
土井 裕明 弁護士

2014年12月2日

求められる早急な国際的基準作り

——海外を迂回する決済で消費者の被害回復を困難にしているこのような決済代行業者に対する行政の認識は?

 消費者庁や経済産業省と懇談した時も、日本法を使って何とか規制の網をかけられないかなという話には当然なりました。しかし、日本に営業部隊を置いたから国内法が適用されて、いろいろ規制がかけられるということになれば、本格的に彼らは海外に逃げるだけでしょうという話になって。むしろ、チャージバックリーズンをきちんと整備するということの方が現実的な解決ではないかとも考えられます。それには我が国だけで出来ることではないので、OECDの枠組みなどで各国政府が協調していかなければいけない話です。

——騙された決済のチャージバックは簡単に認められないのですか?

 1994年のOECD の「消費者のための世界市場会議」でチャージバックは消費者保護のための仕組みと位置づけられましたが、そもそも、チャージバックリーズンのすべてが公開されているわけではありません。
 それでも、VISA、Masterなどの国際カード本部のチャージバックリーズン(チャージバックの要件)は一部公開されており、「海外旅行でホテルの予約をした後キャンセルをしたがキャンセル処理ができておらず、ホテル代がカードで決済されてしまった」というような定形的なトラブルについてはマニュアル的にチャージバックを認めているようです。

 一方、詐欺に遭ったというような理由では、一律的にチャージバックに応じるということはないようです。これは、利用者が詐欺だとクレームをつければことごとくチャージバックを認めるということになれば、代金を踏み倒す目的でのチャージバック申し立てを誘発することになりかねないので、仕方ない面もあります。
しかし、詐欺を行った事業者が海外にいる場合、国外の事業者を直接相手にした訴訟を起こして支払った代金を取り戻すことはとても困難なので、国際カード本部は時代に合ったチャージバック運用ルールを定めるべきだと思います。これまではチャージバック制度はカード会社内でも認知が低く、今後はチャージバック制度の活用によって被害回復はもっと図られるものと思います。

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