第6章「情報商材」から見た出版コンテンツ・ビジネスの課題
「情報商材」は種類も点数も多く、個別にその内容を精査することは難しい。しかし、市販本にきわめて類似したものや、まったく科学的根拠のない情報内容を誇大に広告し、法外な価格で販売していることが多いのは事実だろう。
市販本からの剽窃は著作権法、重要な事実を隠し断定的に広告することは消費者契約法など、そもそも法律に抵触するケースもありうることは指摘しておかなくてはならない。
それでは改めて「情報商材」の特徴をまとめてみよう。
(1)主として「情報商材販売サイト」からダウンロードして情報内容を入手する、(2)決済はクレジットカードほか多種多様、(3)フォーマットは主としてPDFファイル、(4)文字情報が中心、(5)価格は市販本に比較して高く、そのことによって稀少で有用な情報と思わせる、(6)「あと3名で大幅値上げ」「悪用厳禁!」「1時間で100万円」など扇情的、誇大広告表現を多用する、(7)編集過程を経ていない、(8)内容は投資・資産運用、ネットビジネス、美容・健康、恋愛・結婚、教育・自己啓発、ギャンブルなどが中心、(9)アフィリエイト広告による販売促進、(10)版の保証がない(改訂が自由に行われる)。
これまでの紙媒体の本も、その情報内容に関して疑いを持たざるを得ないものが存在することは事実である。しかし、今日の「情報商材」ビジネスが提起しているのは、デジタル化された出版コンテンツがネットワークを通じて頒布される際の情報倫理の問題である。
青少年保護のための有害情報等に関して「インターネットコンテンツ審査監視機構」(略称:I-ROI)のような自主規制団体が設立されたのも、国や地方公共団体による法的表現規制を招来しないためである。
また、家庭用ゲームソフトの世界では「特定非営利活動法人 コンピュータエンターテインメントレーティング機構」が「ゲーム系ソフト」と「教育形/データベース系ソフト」に大別して審査を行っている。この審査の対象となる表現種類には「性表現系」「暴力表現系」だけでなく「反社会的行為表現系」があり、そこには「犯罪描写」「非合法なギャンブル」などの項目が挙げられている。
前述のインフォトップのサイトには、「ユーザー(購入者)の7つの安心」として、商品登録の審査について次のように書かれている。
「初回審査での合格率は約2割。残りの8割には、都合の良いことしか記載しないような誇大表現や特商法の不備などで改善を要求しています。販売商品を試して効果があるかどうか・・・というところまでは審査できませんが、少なくとも法的基準やインフォトップ独自審査基準はクリアしている商品ばかりを揃えております。情報は購入するまで確認することができない分、こうした審査体制がしっかりしていることで安心に繋がると考え取り組んでいます」
しかし、これは出版社が通常に行う「編集過程」とはまったく異なることは明らかであり、購入履歴データの取り扱いも含めて、ネット時代の出版コンテンツの生産・流通・利用に関する新たな課題として検証しておく必要があるだろう。