[解説] 電子出版の全貌と未来
~電子書籍ビジネス発展への処方箋~

第4章 「情報商材」の問題点

 近年、「情報商材」と呼ばれるネットビジネスの悪質性が取り沙汰されている。
 「情報商材」とは、投資やギャンブルの必勝法、美容やダイエット法、異性にもてる方法などの情報をなかには一般の書籍の10倍以上といった高額で販売されるものであり、内容は購入するまで分からない仕組みになっている。販売者は個人や業者だが、主に情報商材を販売する専門サイトで売られているというものだ。

 このビジネスの特徴は「情報商材」の購入によって損をした人が、その損失を取り戻すために、アフィリエイト(成功報酬型広告)のしくみを利用して、逆に宣伝するという負の連鎖が広がることである。「情報商材」ビジネスの実態はつかみにくいが、「年間売り上げは総額200億円と推測される」(『読売新聞』2008年7月5日付け朝刊39面)という。
 「情報商材」ビジネスの国内大手「株式会社インフォトップ(代表取締役 田中保彦氏)」の「媒体資料」(2009年12月)から数字をまとめると、このビジネスは次のような概要となっている。

(1)全ユーザー数:80万人を超える、(2)トップページ月間総PV数:約2,800,000PV、(3)購入者会員総数:720,718人、(4)登録アフィリエイター総数:129,598人、(5)登録発行者総数:12,632人(24,822商品)、(5)発行者の属性:男性69%、女性16%、法人15%、(6)アフィリエイターの属性:男性71%、女性27%、法人2%、(7)購入者の属性:男性68%、女性32%、全体の74%が30代〜60代。

 つまり、このビジネスは「情報商材ASP(アフィリエイト・サービス・プロバイダー)」が、投資・資産運用、ネットビジネス、美容・健康、恋愛・結婚、教育・自己啓発、ギャンブルといったカテゴリに沿って、自分でプロデュースした「情報商材」を販売できるように「発行者」にサイトを提供し、「購入者」は書店では販売していないノウハウやソフト、成功事例をダウンロード購入し、「アフィリエイター」は高額な商品のため高額な報酬を期待して商品販売に協力するというしくみによって成り立っているのである。(なお、インフォトップは「情報商材」という名称の社会的イメージの悪化に伴い、2009年より取扱商品の総称を「情報商材」から「情報教材」に改めており、業界全般に追随する動きが出ている。)

 「情報商材」の問題点はなんといっても、読んでみないと分からない情報内容に高額の価格が付けられ販売されていることにある。このような動向は「電子書籍」に代表される今後の出版コンテンツ・ビジネス全体の不信感につながりかねないのではないだろうか。
すなわち「情報商材」販売業者が「電子書籍」「e-book」「インターネット出版」等と称して、新規読者を開拓して「情報商材」を販売していることによって、「コンテンツのダウンロード販売=インチキ臭い、危ない」というイメージがネットユーザーの間で定着しつつあることは深刻な問題だろう。

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