「ネット詐欺」騙す側、騙される側の心理学 情報詐欺の深層

2014年10月4日

「必ず儲かる」「絶対に痩せる」「病気が治る」「万馬券的中」「彼女が出来る」
なぜ人はバカげた誇大広告に騙され、何万円も払ってしまうのか?
被害の急増に国民生活センターや各自治体も次々と警鐘を鳴らすなか、心理学者の富田隆先生に「情報商材」加害者と被害者のココロを解き明かしていただきました。

富田 隆(とみた たかし)

上智大学大学院文学研究科博士課程修了。駒澤女子大学人文学部教授。人間の心を情報処理系として捉える認知心理学を専門とする。人間の深層心理に多方面からアプローチを加える手法は、多くのメディアから注目を集めている。『「なりたい自分」に出会える本』(2004年成美堂出版)、『詐欺の心理学』(2004年KKベストセラーズ)、『決定版! 悪魔の心理ゲーム』(2006年河出書房新社)ほか著書多数。


ネットワーク利用の犯罪検挙件数(警察庁統計より)

ここ数年の犯罪検挙の傾向を見ると、インターネット関連の詐欺が増加していることがわかる。
2008年度版の『犯罪白書』によれば、ネットワーク利用犯罪のうち、詐欺は全体の38.6パーセントを占めている。そのネット関連詐欺の検挙数は、2004年頃までは500件台だったものが、2005年度には1400件を超え、以後、毎年1500件台で推移している。

ネット詐欺などと呼ばれるこれら事案の代表格はネットオークション詐欺で、ほかにもSNSや出会い系サイトなどを悪用したものも少なくない。そうしたネット詐欺は、これまで摘発が難しいとされていたが、その状況に警察も厳しい姿勢で臨む傾向が現われている。

たとえば、今年の1月13日、警視庁と宮城県警は、東京・新宿区歌舞伎町の出会い系サイトの経営者らを詐欺容疑で逮捕した。その出会い系サイトの業者たちは、「サクラ」と呼ばれるスタッフを使って男性利用者を欺き、利用料として現金を騙し取っていた。

このような状況の中、ネット上の新種の悪質商法として「情報商材(情報教材)」による被害が急増している。情報商材とは、「高収入が得られるノウハウ」とか「すぐに結婚相手が見つかる方法」などといった特殊な情報を記載した文書を数万円という高額で販売するものだが、実際には市販の書籍とほぼ同じ内容であるなど、とても高額の価値が見当たらない詐欺的な商品であるケースがほとんどである。
この情報商材詐欺については、マスコミでの相次ぐ報道もあって、国民生活センターなどに寄せられる情報商材関係の相談や苦情が2007年頃から目立って多くなっている。また、東京都では情報商材に関する相談が、2009年11月までに前年の7件から一気に66件へと急増。12月には情報商材に対して注意を促すリリースを発表した。
一方、情報商材の市場はさらに拡大の傾向にあり、情報商材販売の最大手である株式会社インフォトップ(代表取締役 田中 保彦氏)では毎月2万人余りが新たに情報商材を購入するといわれている。
ネット詐欺や詐欺的な情報商材に人はなぜ騙されるのか。『詐欺師の心理学 騙す側、騙される側のココロの法則』の著者である、心理学者で駒沢女子大学教授の富田隆氏に詐欺の加害者と被害者双方の心理や行動について3回に分けて解説してもらった。

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