「ネット詐欺」騙す側、騙される側の心理学 情報詐欺の深層

2014年10月4日

■信じ込もうとする情報商材被害者


4ヶ月で元手9万円を一億円にすると謳うFX商材

それらの情報商材の内容は、とうてい実現できないとすぐにわかるものばかりです。
たとえば、「誰でも楽をして毎月500万円稼ぐ方法」なんて、あるわけがない。もしあるとしても、何か『裏』がある。そう考えるのが普通です。
でも、冷静に考えれば「おかしい、ありえない」内容の情報商材に手を出してしまう人が少なくない。それはなぜなのだろうと考えてみると、騙される人の心の内部に、その理由が隠されている場合が多いのです。
人は誰しも、『信じたいものを信じようとする』傾向があります。そして、その傾向が強くなると、どんなものでも『信じたいもの』に関連付けてしまう。そうなると、どんな情報が入ってきても、結論は決まってしまいます。

私の著書『詐欺の心理学』のなかでも引用していますが、1938年にアメリカで起きた「火星人パニック」の例があります。火星人が地球に襲来するという内容のラジオドラマ『宇宙戦争』が放送された際、これをドラマではなく実際の報道であると勘違いした人々がパニックとなり、一説には死傷者が出たとも言われているものです。

この事件では、冷静に判断してドラマであると理解した人々が多数である反面、最後まで現実のニュースであると信じて疑わなかった人も少なくなかったらしい。そうした最後まで信じ込んでいた人々は、それがドラマであり現実ではない要素を得ても、反対に「報道である」との誤解を助長させるような理解をしたというのです。
たとえば、ラジオのチャンネルを他局にかえてみれば、火星人襲来のニュースなどどこにも流れていない。ここで冷静になればドラマだとわかるのだが、すでに『信じ込んで』いる人々は、『パニックを避けるため、あえてニュースを流していない』と考えたといいます。


わずか一ヶ月で不妊が解消されると謳う商材。投資もコンプレックスも、セールスポイントは「はやく、手軽に」。販売者の発想は一緒である

こうした心の作用が働くと、いかに『ありえない』『非現実的な』ものであっても信じ込んでしまうというわけです。
情報商材の販売サイトを見ますと、「FXで1億稼げる」とか、「競馬で勝率8割」とか、はたまた「すぐに妊娠できる」とか、およそ非現実的なものが多いわけです。
もちろん、そうした誇大広告や虚偽広告で騙す側が悪いのはいうまでもない。でも、実は騙される側にも「騙されたい」という心理があるのです。
「騙されたい」というと語弊があるかもしれませんが、つまり、人間というものは、「自分を導いてくれるものが欲しい」と思っているものなのです。

人は誰しも不安を抱えています。まして現在の日本には、不安を助長させるような要素があふれています。不況からリストラや失業の不安があるでしょうし、高齢化社会での老後の不安。病気やケガの不安もあります。医学が進歩したといっても、エイズなどの新しい病気が次々に発見されている。「もしかしたら、自分は未知の病気にかかるかもしれない」という不安だって、絵空事ではない。
付き合っている彼女や彼氏がいないということは、パートナーがいない寂しさというだけでなく、「自分は精神的に欠落しているのではないか」といいう不安をもつ人もいると思います。
今を生きている人の中には、何の不安もない人なんていないでしょう。

そうした不安に対して、なにかしらの「意味」や「答え」を与えてくれるものに、人は強い関心を持つのです。そして、少しでも信じてしまうと、それがいかに非現実的であっても、強く信じ込んでいくようになる。「火星人パニック」がまさにそのケースです。
不安のような、人の心の弱い部分を狙い撃ちにしてくるのが、まさに詐欺的な手法だと言えるでしょう。

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