■詐欺に遭っても自らを納得させようとする
詐欺の被害にあった人のなかには、「騙された」という事実を認めたがらないケースも少なくありません。
アメリカの心理学者レオン・フェスティンガーが唱えた『認知的不協和』の理論というものがあります。
認知的不協和とは、人が自分に都合の悪いものを知ったり認めたりした場合に、そのことに対して不快感を覚えることで、その都合の悪いものを排除したり、理屈をつけて納得したりする傾向があります。
すなわち、『騙された』という事実を認めてしまうと自分が傷つき不快になってしまう。
だから、理由をつけて、たとえば『購入した情報商材は、確かに内容は酷いけれど、商品が届いたのだから自分は騙されたわけではない』と、自分を納得させてしまうわけなのです。
一方、騙す側の業者は、そうした被害者の心の隙間を目ざとく見抜いて、さらに詐欺を仕掛けてきます。詐欺師というのは、人がもつ不安や不幸といった精神的なほころびを狙い撃ちにしてくるものです。だから、「自分は騙されない」「自分は判断で間違うことなんてない」「騙されるヤツはバカだ。自分は違う」と思い込んでいる人のほうが、かえって騙されやすい。そうした人のほうが、認知的不協和を嫌うからです。それを詐欺師のほうも知っているから、逃げたりせずに、つかず離れずといった関係を保つわけです。同じ人が何度も詐欺に引っかかってしまうのは、心理学的な理由があるのです。