トルカでが急進化するケータイ検索

2014年1月10日

日々の消費行動から賢くオススメ提案

 NTTドコモが「マイ・ライフ・アシストサービス」というサービスを実験的に行っている。概要は次のようなものだ。

 「従来の検索サービスでは、探したい情報中にあるキーワードをユーザ自ら推測し入力して検索しているモデルであり、ユーザに負担がかかり、自ら想定できなかったキーワードに関する情報は知る由もないという状況です。
 NTTドコモが提案する『マイ・ライフ・アシストサービス』では、ユーザに負担を強いることなく日々の行動情報(位置情報・プレゼンス・属性等)を安全に収集・蓄積し、それを活用することでネットワーク上の異なる企業等の様々なサービスや情報を組み合わせて利用者に提供する行動連鎖型検索サービスを構築します。
 将来的に本サービスにより、ユーザは個人情報を必要以上に情報提供者に開示することなく、欲しい情報に加えて、新しい発見情報を従来の検索手段に頼らずに入手できます。一方情報提供者は、自社で管理する個人情報を最小限に留め、統計的な行動情報を自社サービスに活用でき、ユーザの潜在的ニーズに働きかけて新たな消費を産み出すことを目指します」

 この文章でドコモは「行動連鎖型検索サービス」という言葉を使っている。行動連鎖とは、どのような意味なのだろうか。プロジェクトの担当者はこう話す。
 「従来のグーグル検索モデルは、キーワードで検索して、ウェブからマッチングをはかるというアプローチでした。それに比較してケータイは利用者に持ち歩かれることによって、得られる情報が飛躍的に多いというメリットがあります。ケータイを持っている人の行動を取得する機器という意味もあるということ」

 ケータイは利用者が便利に使う機器であるのと同時に、利用者の行動を取得する機器にもなっている。そこに逆転の発想があるというわけだ。
たとえばおサイフケータイは、単に店舗などで読み取り機に電子マネーのコードを渡し、決済を行うだけではない。おサイフケータイには「トルカ」という機能もあり、トルカの読み取り機にケータイをかざすと、店舗や地域の情報などをケータイのメモリの中の「トルカフォルダ」に書き込むことができる。

 たとえばアパホテルでは、トルカを使ってチェックアウトを正午まで延長できるクーポンを配布している。またチェッカータクシーでは、おサイフケータイを使って運賃を支払った客に対して、支払いと同時にトルカでメールを配信し、配車受付センターを案内するというサービスを行っている。
トルカIDというケータイごとに割り振られている番号を読み取り機に送ることも可能で、ウェブのクッキーと同じように利用者情報を一元管理することもできるようになっている。

 つまりこのトルカを使うと、ケータイから外部に情報を自動的に送り出すことが可能なのだ。
佐藤氏は「昔のケータイはインターネットに接続する際、URLやメールアドレスを手入力していました。それから二次元バーコードが登場し、カメラで撮影するだけで入力することができるようになった。しかしこれもカメラを起動しなければならないという面倒がある。しかしトルカを使えば、読み取り機にかざしただけで情報を双方向でやりとりできるのです」と話す。

 これは検索という行動のプロセスの一部が、自動化されていくということだ。そしてこの自動化によって、利用者は自分では意識しないで、最適化された検索結果を得られるようになる。
つまりは「検索」という積極的な行動ではなく、より受動的な「レコメンデーション(お勧め)」に検索の形態が移行していくことになる。
 これは何を生み出すのだろうか。
 最大のメリットは、利用客個人に対して的確なマッチングを行えることだ。
たとえば毎日、夜遅い午後10時に郊外の駅で電車を降りていた人が、この日に限っては午後七時に同じ駅を降りた。そうするとシステムの側は「いつもより早く帰宅したのだな。だったら駅の近くで食事をすることをお勧めしよう」と近所の居酒屋をレコメンドする。
もちろん、この利用客が行きつけにしている店と同じ程度の料金レベルの店を勧めるのである。
 つまり行動連鎖型マッチングは、利用者個人のありとあらゆる属性や行動履歴と結びつけることによって、新たなビジネスモデルを生み出すことが可能になるということだ。

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