日本人に根強いクレジットカード不信
クレジットカードを利用してインターネットのショッピングサイトから商品を購入するという行動に対して、いまも「セキュリティに不安がある」と感じる日本人は少なくない。
たとえば総務省が2009年3月に行った「ICT関連動向の国際比較調査」によれば、クレジットカード番号やパスワードなどをウェブサイトを通じて不正取得されるのではないかと不安を感じている人は日本では80パーセント近くに上っているが、デンマークでは30パーセントに満たない。
これはデンマークのウェブのセキュリティが高いとか、日本のセキュリティ対策が進んでいないとかそういうことではなく、日本人の方がネットに対して不安を感じることが多いという文化的感覚の問題なのだ。
だから総務省の調査でデンマークとスウェーデン、イギリス、アメリカ、シンガポール、韓国、日本の7カ国で「情報通信に対する安心感」を総合的に偏差値化した結果は、トップのデンマークが偏差値60に達しているのに対し、日本は最下位で34.3にとどまっている。
こうした日本人特有の不安感を和らげ、ネットショッピングを普及させていくためには、安心・安全をベースにした決済システムが確立していかなければならない。そしてそのようなシステムとして最も適していると見られているのが、電子マネーだ。
特に日本で注目されているのは、先にお金をチャージしておいてそこから精算していくプリペイド型の電子マネーだ。たとえばJR東日本のSuicaやアップルの音楽配信サイトで楽曲を購入できるiTunesカードなどがそうだ。
電子マネーを利用すると、個人情報やクレジットカード番号などを入力する必要がない。もちろん実際に商品を送ってもらうような場合には住所氏名が必要となるが、たとえば音楽や動画、ソフトウェアなどのデジタルコンテンツであれば、いっさい個人情報を入力しなくても購入できてしまう。
加えてかりに詐欺にあったとしても、損をするのは入金した金額だけだ。クレジットカードのように番号を盗まれた挙げ句に勝手に商品を購入されたり現金を引き出されたりして、巨額の被害金額になってしまうようなリスクは生じる可能性がきわめて低い。
店舗の側からも、電子マネーは大きなメリットがある。まず第1に、顧客に安心してもらえることに加えて、住所や電話番号、名前、クレジットカード番号などをいちいち入力してもらう手間がかからないから、購入までのハードルが低くなる。
そして第2に、もし自前で電子マネーシステムを作っていれば、顧客を組織化することが可能になる。電子マネーをポイントシステムとも連動させ、さらに顧客の購買履歴をデータベース化していくことで、顧客の購買行動をつかんでマーケティングデータとして活用していけるし、そこから顧客に対する適切な商品レコメンデーション(お勧め)機能を提供していくようなことも実現できるようになる。
つまり電子マネーは、ライフログ(顧客行動の収集・解析システム)と融合していく可能性も秘めているのである。クレジットカードの時代には不可能だった、安心・安全と顧客のネットワーク化を双方実現するシステムとして、電子マネーは今後ますます進化していく可能性が高い。