教育現場からネット企業への苦言提言 子どもの心身と財布を狙い撃つインターネットコンテンツ 押し寄せる「情報公害」から我が子を守るために

2014年7月27日

モバゲーや前略プロフなどのコミュニティサイトは、子どもたちにとってある種の生活インフラと化した観があるが、青少年の健全育成の見地からは問題点が多々存在している。もはやユーザーの自己責任論だけでは対処できない「情報公害」について、社会とネット企業一体となった取り組みがいま求められているのだ。

藤川 大祐(ふじかわだいすけ)

千葉大学教育学部教授(教育方法学・授業実践開発)。大学院修士課程カリキュラム開発専攻(昼夜間開講)等担当。メディアリテラシー、ディベート、環境、数学、アーティストとの連携授業、企業との連携授業等、さまざまな分野の新しい授業づくりに取り組む。『本当に怖い「ケータイ依存」から我が子を救う「親と子のルール」』(主婦の友社)他、著書・編著書多数。

ネット企業は「情報公害」とどう向き合うべきか

新宿エリアでひと際目立つNTTドコモ代々木ビル。迷惑メール全盛期の莫大な受信パケット料で建てられたとも。

 多くの子どもがPCや携帯電話でインターネットを活用するようになっている現在、インターネットの利用に関わる問題を「自己責任」で済ませることはできなくなっている。ネット企業に関わる企業は連携して、子どもたちの健全育成につとめなければならない(本稿では、おおむね18歳未満の青少年を「子ども」と呼ぶことにする)。

 ネットは私たちの社会に大きく貢献しているものの、事件・トラブルにつながる弊害も多い。子どもの健全育成という観点から見れば、「情報公害」とでも言うべき有害な情報環境から子どもをどう守るかは深刻な問題である。
だが、これまで、ネット企業の取り組みは後手にまわってばかりであった。


 携帯電話事業者は、フィルタリングの無料提供や学校への出前授業、教材配布等で、子どもの保護や教育に取り組んでいるが、本格的な取り組みは2007年頃からである。
2004年頃までにインターネット機能、カメラ機能、音楽ダウンロード機能等が次々と搭載され、子どもが多く携帯電話を使い、事件やトラブルが多くなっていたにもかかわらず、2006年の段階で、フィルタリング機能加入者数を公表せず、公表しない理由すら言えないということであった。

【18歳未満の子どもがいる家庭におけるフィルタリング浸透状況】
総務省「通信利用動向調査」(平成20年度調査)より

2005年くらいから、無料ホームページ作成、ブログ、SNS、プロフ(プロフィール・サイト)等のコミュニティサイトが子どもに人気を博し、サイトでの中傷やサイトを介した出会い(さらには性犯罪)が問題となっていたが、主要サイトの多くが丁寧に監視をするようになったのは2007年以降である。
また、現在でも利用者の年齢確認はほとんどのサイトが自己申請によっており、成人向けのサービスを子どもが利用して不適切な出会いにつながることが完全には防止されていない。また、特にプロフでは、多くの子どもたちが顔写真や学校名を掲載し、いじめ、暴力事件、性犯罪等にもつながっているが、サイト側では子どもの個人情報掲載を抑制する策をとってはいない。

 ネット企業は、利用者を増やし売り上げを稼ぐことを優先してしまい、「情報公害」からの子どもの保護を後回しにしがちである。
厳しい競争の中でやむをえないと思われるかもしれないが、もはやインターネット草創期ではない。関連する企業が連携、協力して、「情報公害」と向き合って、その弊害から子どもを確実に守ることが、今後のビジネスの前提となるはずである。

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