アフィリエイトの課題と対策
アフィリエイト業界は量的に拡大を続けているが、誕生してから約10年という新しい業界だけに課題も存在する。アフィリエイトが急拡大する一方で、次第に歪みも生じるようになった。
広告からの売上が大きくなれば、アフィリエイトに興味を持つ企業、取り組む企業は自然に増える。アフィリエイトという業界が発展するかどうかは、アフィリエイトの広告価値が向上するかどうかという質の問題にかかっている。
そういった意味で、アフィリエイターによる不正行為は、アフィリエイトの広告価値を大きく損ねている。
まず、不正に成果を生み出そうとするアフィリエイターが現れた。たとえば自動車保険アフィリエイトプログラムにおいて、架空の見積もり請求をさせ、スポンサーである保険会社から見積り者獲得の報酬を得ようとするなどの不正行為が見られた。
複数のアドレスを使って資料請求や会員登録について架空の申込を行い、不正に成果をあげる手法である。アルバイトを雇い、組織的に不正を働く者もいる。同様に、クリック報酬型においても、不正行為は見られる。アフィリエイター本人が、連続かつ大量のクリックを行って、不正にクリック報酬を稼ぐ行為である。
また、商品内容と著しく違う趣旨の誇大広告を掲載する不正行為は、消費者被害をもたらすだけでなく、消費者からのクレームがスポンサーに向かうという意味でも問題だ。もちろん法的にも、アフィリエイターが誇大広告を掲載した場合には、その責任をスポンサーがかぶることになる。
スポンサーは、アフィリエイターが誇大広告を掲載していないかどうかを、ASPと連携しながらチェックしていく必要がある。これは景品表示法の規制によるものだが、健康関連商品を扱う場合では、誇大広告が薬事法に抵触する可能性もあり、この場合も、法的な責任がスポンサーに及ぶことがある。
アフィリエイターによる不正のうち、刑法に抵触するケースも多々ある。アフィリエイトサイトを作成・更新する手間を省くために、他人のサイトや掲示板からその内容を丸々コピーしてしまうアフィリエイターは多く見られるが、これは明白な著作権法違反である。
実際、2009年5月には、大阪府の会社員が、ポータルサイトに掲載された健康関連記事を無断でアフィリエイトサイトに転載し、健康食品の販売を行っていたとして、著作権法違反の疑いで逮捕・送検されている。
さらにタチの悪い刑法犯事例では、アフィリエイト収入を所得申告しないケースも見られる。2008年12月には、法人としてアフィリエイトサイトを運営していた神奈川県の男性が、約4億3500万円の所得隠しをしたとして、法人税法違反罪などで在宅起訴されている。
2010年2月には、大物アフィリエイターとして知られる沖縄県の男性が、約2億円の所得隠しをしたとして、法人税法違反罪で告発された。アフィリエイト収入の所得申告についても、業界および関係機関とが連携して、啓蒙活動を行っていく必要がある。
スポンサーの不安は、アフィリエイターの不正だけではない。情報商材業界では、情報商材ASPのインフォキャッチが2008年に倒産し、スポンサー(情報商材販売者)がASPに預けた多くの商材データが失われた。もちろんアフィリエイト報酬の債権も、まったく回収困難な状況である。ASPの倒産は、アフィリエイターにとってもスポンサーにとっても、甚大な被害を及ぼす。
こういった不正行為や不安定なビジネスモデルは、スポンサーをアフィリエイトから離れさせることにつながり、結果的に業界の衰退を招きかねない。不正行為を摘発する仕組み、予防する仕組みを構築することはアフィリエイト業界の大きな課題となっている。
ASPの事業団体である日本アフィリエイト・サービス協会は、2006年10月にアフィリエイト関係者が遵守すべき業界統一基準である「アフィリエイト・ガイドライン」を策定。消費者の保護、健全な市場育成、業界の社会的な認知度向上を目的に、啓蒙活動を行っている。
具体的には、ASP、スポンサー、アフィリエイターが遵守すべき法令や運用ルールなどが規定されている。
また、日本アフィリエイト・サービス協会の加盟社では、2007年10月から不正行為に関する情報を共有することで、不正行為の防止に努めている。