消費者向け電子商取引の広告表示のあり方

2014年3月24日

コスト・効率の面で優れる自主規制

 もっとも、国による規制は一定の問題点をはらんでいる。それは政府が政策内容について常に専門的知識を有するとは限らないし、政策遂行にあたって多方面からの意見の聴取や調整が必要となり時間やコストを要しかねず、「政府の失敗」に至るおそれがあるからである。
これを解消するために検討されるべきなのが、事業者サイドによる自主的取り組みである。

 しかし、事業者が法の要求を超えて、自主規制を行うことは妥当といえるか。営利を目的とする事業活動と矛盾するのではないかが問題となる。

 自主規制は、たしかに事業活動の制約となりうる。
しかし自主規制を策定しこれを遵守することは取引関係で生じるトラブルを回避するだけでなく、長期的には法が追加的な規制を設けることを回避できる可能性がある。
政府よりも専門的知識を有する事業者が自主的取り組みをすることは、規制に要するコストを減じさせる可能性が高いのである。CSRということばが市民権を得て、コンプライアンスや企業の社会的責任、ソーシャルマーケティングといった類似の概念も紹介される機会が増えた今日、こうした自主的取り組みをすることのメリットはますます高まっていると考えられる。

 広告分野で著名な自主規制機関に(社)日本広告審査機構(JARO)がある。JAROはテレビ局や新聞社などの広告媒体と、広告主や広告製作会社などによって設けられた業界団体であるが、消費者からの広告表示に関するガイドライン作成や苦情処理を行う中立的機関としての性格が強い。

 eコマース関連でも現在、インターネット広告推進協議会日本アフィリエイト・サービス協会のような自主規制機関が存在する。
これらの団体はeコマース市場が成長途上であるにも関わらず設立されたという点で先駆的意義がある。一方で現状では、JAROと比較して知名度が劣るし、業界振興という側面が強く消費者の苦情処理への対応は十分とはいえないという限界も否めない。
今後は、eコマース市場でもJAROのような消費者保護に留意した中立的機関の育成が求められる。

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