目先の利に走り、偽装表示で短期の収益確保にいそしむ事業者はいつの世でも存在する。もちろんその多くは早晩露見し社会的な制裁を受けるのだが、事は個別の事業者の信用失墜にとどまらない。発展著しい電子商取引市場への信頼喪失という形で、全ての事業者、そして消費者に降りかかってくるテーマなのである。東京都の委託を受け、不当広告表示の収集分析に携わった丸山正博氏が、自身の経験を踏まえて提言する。
丸山 正博 (まるやままさひろ)
明治学院大学経営学科准教授。一橋大学商学部卒後、三井信託銀行入社。その傍ら、筑波大学大学院経営・政策科学研究科で企業法学を専攻し、2000年に(財)流通経済研究所へ転身。主にマーケティングの観点から、電子商取引と消費者政策についての研究提言を行う。2003年より拓殖大学商学部准教授、2008年より現職。
東京都消費生活部取引指導課「不当表示・広告の収集調査」を共同監修。都は同調査で景品表示法に違反するおそれのある表示を行ったネットショッピング37事業者に対する改善指導を行った。
消費者保護の観点からの法規制も、度を過ぎれば経済活動を停滞させてしまう。むしろ新たな立法を導入する前に、まずは現在の法規制が適正に運用されているのかについて再検討し、業界団体による自主的な規制の可能性を探ることが肝要であろう。インターネット上のビジネスにおいて、消費者、事業者、行政に求められているのはまさにソーシャルマーケティング的な思考なのだ。
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eコマースにおける広告表示に関する規制は、商品分野を問わない包括的な規制と、特定の商品分野ごとの個別的な規制に大別できる。前者の代表例が景品表示法(リンク:PDF)と特定商取引法(正式名称は特定商取引に関する法律)であり、後者に該当するものは多数存在するが、その一例は薬事法や、食品衛生法、家庭用品品質表示法である。
景品表示法や特定商取引法を含め表示規制の多くが2009年に新設された消費者庁に移管された。以下では特定の商品分野へ偏らず、包括的な規制を中心に話を進めていきたい。
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広告表示が不当であるとして景品表示法(正式名称は不当景品類及び不当表示防止法)違反に問われた事案は、消費者庁(2009年8月までの情報は公正取引委員会)のウェブサイトに掲載されるし、それ以外でもトラブルが頻発している事案の多くは国民生活センターのウェブサイトに掲載される。以下ではそうした事案を踏まえたうえで、形のあるモノと、無形の情報やサービスとに分けてeコマースでの不当表示の典型例を紹介する。
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BtoC取引において、消費者にとっては広告表示が全てであり、事業者には対面取引以上の規範意識が求められる。しかし実態はどうか? ネットビジネス事業者の多くがおよそ正反対の行動原理で商行為を行っている。ここではどのような規制が有効なのだろうか。
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