消費者との協力による監視と業界の自主規制
JADMA(日本通信販売協会)。業界の成熟過程において、自主規制団体の設立は大きなターニングポイントとなる。
第三に不当表示を探索する手がかりとなる監視活動について、行政だけではマンパワー不足のため消費者モニター制度が活用されている。
公正取引委員会が設けた100名近くの一般消費者からなる電子商取引調査員制度では、インターネット上の不当表示の監視活動を行っており、違反となるおそれがあると思われる表示について、公正取引委員会が当該サイト運営者に対して景品表示法の遵守を啓発するメールを送信し、事業者の自主的な表示の改善を促してきた。
また前章でも紹介したとおり、東京都は都内の大学と連携してインターネット上の景品表示法に関する不当表示調査を行っている。
筆者は調査員となったゼミナール学生の指導教員として携わったが、この調査は、不当表示を行う事業者に対するけん制効果とともに、他の道府県に先駆けて行われたインターネット上の調査であり、調査員となった大学生に対する消費者教育としての効果もあったと考えられる。
第四に、景品表示法が定めた事業者の自主規制である公正競争規約制度では、eコマースに特化した規約は存在しないが、商品分野ごとに存在する規約によってeコマースの不当表示の削減にも一定の効果があったと考えられる。
また特定商取引法30条が設置を認めた団体である(社)日本通信販売協会は、協会ガイドラインの設置や所定の要件を満たした事業者にオンラインマークを付与するなど、広告表示を含めたトラブル防止に一定の役割を果たしている。
法規制の限界とその先に見えるもの
以上のように、eコマースの不当な広告表示に対していくつかの法律が存在し、それら自体は有効に機能している。一方で不当表示は依然として存在しているわけであるが、この対策としてさらなる法規制の強化が望ましいのであろうか? それとも、事業を行う上で専門的知識を有する事業者による自主的取り組みの方が、むしろ効率的な規制となるのではないだろうか? 次章は結論として、eコマースにおけるこれからの広告表示の規制のあり方を考えていく。