ダイエットはこれで最後。痩せるのは簡単です!

問題事例1 ダイエット篇

具体性のありそうな数字で引っ掛けようとする 冒頭だけで見る価値ナシの典型パターン

検証した情報商材

販売モール 株式会社インフォトップ(代表取締役 田中保彦)
制作業者 株式会社インベサイド (代表取締役 小島礼大)
筆者 関根茜
所在地 東京都千代田区神田須田町2-2-5
須田町藤和ビル5F
電話 03-3256-3114
E-Mail jimukyoku@slimtaikei.com
価格 ¥24,800
URL http://slimtaikei.com/topil.html
情報商材
『関根茜という女性が、11年かけて、9日間で6.8キロ痩せるダイエットの法則を発見した』

販売サイトにモノ申す!

のっけから「読む価値ナシ!」のお墨付き

「冒頭のフレーズ『9日間で6.8キロ痩せる』、これだけでこのダイエット法はほぼ実現不可能と言えます」
取材開始早々、おない内科クリニックの小内亨院長はこうバッサリと切り捨てた。
 体重の増減は(消費カロリー)―(摂取カロリー)という単純な計算式で求められる。消費分より摂取分が多ければ体重は増え、逆なら減る。いたってシンプルだ。
 脂肪1グラムは約9kcal。この数値は生物にとって、摂取、消費、いずれの場合も等価である。つまり脂肪1㎏を消費するには9000kcalの消費もしくは摂取抑制が絶対に必要。もともと体に蓄えられていた脂肪組織として考えた場合には、純粋に脂肪だけでなく水分なども含むため、「概算で脂肪組織1kgの消費に必要なカロリーは7000kcal」(小内先生)となる。

では、冒頭の数字をもとに計算してみよう。
 体重(≒脂肪組織)を6.8kg減らすには、7000(kcal)×6.8(㎏)=47600(kcal)、9で割ると(1日換算)約5300 kcalを消費する、もしくは食事を減らすことが必須なのだが……実は、成人女性の1日の消費カロリーはおよそ2000 kcalなのである。
 つまり、このサイトにある「簡単なダイエット」の正体は、日常の2.5倍近いカロリーを消費しながら、なおかつ一切のカロリー摂取(食事)を絶つ生活を9日間継続するというもの。 あしたのジョーの力石徹ですら悲鳴を上げるだろう、超過酷な「ダイエット地獄絵図」が目に浮かぶのは筆者だけであろうか?

『9日間で6.8キロ』とは、そんな数字なのである。

商品(情報商材)を医学的に検証してみた

サイトに注文して届いた情報商材は全132ページ。16ページもの無意味な前書き(ご挨拶)に始まり、全17章の本編と無料特典からなる。以下、章に沿って検証を進める。

ふんだんに盛り込まれた「あいまいな医学的知識」

『毎日三分で夢にまで見た理想の体型に変身する神秘のダイエット術とは!?』と題された第1章。ここで小内先生が指摘したのは『「神経」「組織」「細胞」は現実なものだと認識するのです』という文章。
「まず第一に、神経は細胞であり、組織でもあるので、これを並列に表記すること自体おかしい。また、認識するのはあくまでも脳の働きであって、『神経や細胞自体が認識する』というのは科学的に全く根拠がない表現です」

 第4章の『朝、昼、夜、瞬間空き時間ダイエットとは!?』は、単に『ツボを押しましょう』というだけの内容。紹介されている7つのツボも、臨床医学的に体重減少に有効と証明されているわけではなく、東洋医学に関する知識のあいまいさも露見している。
 ツボの位置や押す強さの表記が不明確。押す際の呼吸の仕方にも一切触れていない。これでは正しいツボ刺激の効果すら得られないだろう。 讃竹(さんちく)というツボについて『このツボは膀胱へとつながっているツボで』とあるが、讃竹は「膀胱経」という経絡上にあるツボ(経穴)であり、膀胱にはつながっていない。

 主に『水を飲みなさい』という内容の第7章。この中の『水には脂肪を溶かしやすく、排出しやすくする働きがある』という記述、さらに章タイトル内の『脂肪をグングン押し流す』というフレーズ。これは単純にウソである。水にそんな作用はない。
「両者が溶け合いにくいのは、脂肪は親油性(油に溶けやすい性質)の物質で、水は親水性の物質だからです」(小内先生)

 第9章で紹介されている『Deep Breathダイエット』。要は『腹式呼吸で深呼吸する』ということなのだが、ここにある『体脂肪を燃やすポイント』として『いつもより多くの酸素を呼吸で確保する』という記述に対し、小内先生は次のように指摘する。
「血液中の赤血球の酸素飽和度は97%〜98%となっており、ほとんど飽和状態、つまり十分取り込まれている状態です。そこからさらに酸素を取り込もうと深呼吸しても、より多くの、脂肪燃焼が促進されるほどの酸素は血液中に取り込めません」
 また、『深呼吸で血行が促進される様子が体感できれば、老廃物や脂肪分などが抜けていく体に変身成功です!』と書かれている点にも医学的根拠は全くない。
「『脂肪分などが抜けていく』という表現の意味不明さもさることながら、老廃物の代謝に関わる肝臓や腎臓の機能は、健康な状態の人であれば、深呼吸や血行促進程度で向上するものではありません」(小内先生)

思わず絶句する「不可解な文言」

『手首に米粒を貼る』だけ。それが第11章にある『手首刺激ダイエット』。そのメカニズムは以下のように説明されている。

『腱が多く集まる手首に刺激を与えると、その刺激は神経を介して脊髄から脳にまで達します。そしてその刺激が脳から体のさまざまな場所に転送されて、まるで運動でもしたように体の各部分の血行が促進されるのです。その結果、体の様々な部分温度が上昇して、筋肉の働きは活性化します。そしてその周期の脂肪がエネルギーとして消化されていくのです。』(原文まま引用)

 この文章の奇妙さは今回の商材の中でも群を抜いている。「これを書いた人間の単なる仮説」では片付けられない表現が入っているからだ。
「手首への刺激が感覚神経を伝わって脳まではいくかもしれません」。そう話し始めた小内先生は「ただ、それも含めた全文が仮説の域を出ない……。というか……何なんでしょう、この『筋肉の働きは活性化します』という表現は?」と困惑しながらも次のように続けた。
「筋肉の働きとは収縮する、つまり動くことですから…これは『体の温度が上昇すれば、筋肉が勝手に動く』、そう言いたいんでしょうか?」

 もはや仮説の域すら逸脱した内容。ここまでくると同章内の『その周期の脂肪(周囲の誤植と考えられる)』『エネルギーとして消化(消化とは生物が自らの栄養源となる外部の有機物を吸収するため、より低分子の状態に分解することであり、この表現は明らかに不適切。消費の誤植と思われる)』という「蛇足的な医学知識のなさ」に言及する必要すらないように思えてくる。

言葉自体があやしい「セルライト」

 第16章に記述のあるセルライトだが、この言葉、小内先生が調べたところでは「アメリカのエステティシャンが出した本の中で初めてセルライトという言葉が使われ、それが美容業界に広がっていった」とのことで、医学の世界では明確な定義は存在していない。
「セルライトという言葉を使っていること自体、現状では医学的な見地からの内容ではないと判断していいでしょう」(小内先生)

すでにダイエットどころの体の状態ではない

 本編最終章の第17章。指摘すべきポイントは章タイトル内のフレーズ『脂肪の燃焼が2.8倍になる方法とは!?』。まず、この『脂肪』が何を指すのかが不明で「測定のしようもなく、医学的に解説すること自体も困難ですね」と小内先生。
 また、2.8倍という数字も何に対してなのかわからない。「仮にエネルギー消費だとすれば、これは大変なことです」と小内先生が驚愕するのも無理はない。仮に、通常の2.8倍のスピードでエネルギー代謝が進行すれば、蓄えられている脂肪細胞はあっという間に消失。死と隣り合わせの状態に陥る危険性がある。
「仮に、脂肪の組織の減り具合が2.8倍として、ごく一般的なダイエットを行っている人が1ヶ月で2キロの消費として計算した場合、5.6キロ…これが同章に書かれているような『腰をまわす』『ひざをまわす』といったエクササイズ程度の運動量で可能とは到底考えられません。仮にそんなことが起こるとしたら、それこそ代謝異常という病的な状態と考えれます」(小内先生)

販売サイトの表記との整合性を検証すると…

『1日28秒で6キロ痩せる方法とは!?』

おそらく4章のツボ押し(合計は29秒だが)と推測されるが、医学的な根拠はない。

『痩せるスピードに4.8倍差が出るその秘密とは…』
『「失敗しようがない」速攻2キロダウンの法則とは…!?』
『「たった3秒」で脂肪が燃え出す!? 指1本でできるダイエットとは!?』
『1日6秒であなたのモチベーションが3.2倍アップする方法とは!?』

以上については該当する表記なし。

『科学的にも証明された人間の神秘を利用したダイエット術! ほとんどの海外モデルや女優が行っている●●とは!?』

第1章内の一文『ダイエットの秘訣は、美しく痩せている姿を「瞑想」すること』から●●は瞑想であると判かる。そこでまず「瞑想の効果は科学的に証明されているものではない」という点、また、商材本体のタイトルが『意志の弱い人ほど痩せる唯一の方法』であることから、小内先生いわく「痩せている姿を強く、はっきり想像することは、イコール強い意志の表れによるものですから、商材の方向性とは矛盾しています。意志を『瞑想』という言葉に置き換え、誤魔化しているだけです」

『産後ダイエットで脂肪の燃焼が2.8倍になるとっておきの秘訣とは!?』

前出17章。医学的根拠なし。仮に実現した場合、代謝異常など身体が病的な状態と判断される。

『貼るだけで血がドクドクとめぐりだす燃焼ダイエットとは!?』

前出11章。医学的根拠なし。仮説の域すら超越したオカルトチックで意味不明な内容。

総論

 この販売サイト・情報商材は、

『9日で6.8キロ』などの割り切れていない中途半端な数字を並べて信憑性を高めたり、 ダイエット関連で普段よく目にする医学的な言葉を羅列することで、読者が勝手に脳内変換するよう仕向けるなどの仕掛けが施された、

単なる持論・仮説の域を出ないものから超理論にまでおよぶ「独自のダイエット法」に加え、各所で読みかじったと思われる種々のダイエット法を、医学的に立証されているか否かに関わらず寄せ集めた内容

と結論づけられる。

検証に協力頂いた専門医
小内亨
おない内科クリニック院長 医学博士/日本糖尿病学会専門医

医学博士
’84年群馬大学医学部卒後、群馬大学医学部第一内科などを経て米国ルイジアナ州立大学ベニントン・バイオメディカル・リサーチ・センターにて肥満の基礎的研究に従事する。’00年に「おない内科クリニック」開業。同クリニック院長。日本内科学会認定内科専門医、日本糖尿病学会専門医。主な著書などに『危ない健康食品&民間療法の見分け方』『内臓脂肪をスッキリ落とす』。

小内先生が語る「正しいダイエットの目安」

 糖尿病の治療ほか、肥満の解消、いわゆるダイエットに関する指導に携わっている立場から言えば、入院を要する病的な肥満以外なら、基本は1ヶ月に1〜2キロ、どう頑張っても2〜3キロが限界。それが健康的に痩せるダイエットの目安であり、信憑性を判断する基準です。逆に言えば、これを外れたペースで減量可能とコマーシャルしている方法は、病的もしくは限りなく実現不可能と捉えてもいいでしょう。今回のサイトはその典型といえます。

取材・文 岩井浩(医療ジャーナリスト)

<本サイトにおける用語について>

情報商材(情報教材)は、その名称がマスコミ報道や国民生活センターなどの注意喚起によって詐欺的な問題商法として周知されたのを受け、関係事業者はダウンロード販売、インターネット出版、オンライン出版、オンライン教材、オンライン通販、電子書籍、電子出版、ebook(イーブック)、情報販売、情報起業 等の呼称に変更していますが、当サイトでは、用語を「情報商材」に統一いたします。

また、情報商材を制作している者は、販売者でもありますが、情報商材販売モールが実際の販売実務の中心を担っているため、本サイトでは、敢えて販売者とはせず、情報商材制作業者と表記いたしました。また、情報商材業界では、情報商材制作業者のことを「インフォプレナー」と通称しますが、一般的ではないので、本サイトでは用語として使用していません。

※誇大広告や虚偽広告に基づいて購入した情報商材の解約・申込み取消し・返品・返金の要求は情報商材制作業者のみならず、情報商材販売モールに対して行うことが有効と考えられます。クレジットカードで購入した場合は、カード裏面に記載のカード会社の電話番号へ連絡し、騙された情報商材の代金のみの引き落としをしないよう要請し、国民生活センター  (03-3446-0999)または全国の消費生活センターへ相談し、相談員の指示に従って被害回復を図ってください。

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