駒澤大学グローバル・メディア・スタディーズ学部准教授
山口 浩(やまぐちひろし)
1961年生まれ。1963年生まれ。東京都立大学(現・首都大学東京)法学部卒。経営学博士。現在駒澤大学グローバル・メディア・スタディーズ学部准教授、国際基督教大学社会科学研究所研究員。著書に『リアルオプションと企業経営』、共著に『金融・契約技術の新潮流と企業の経営戦略』ほか多数。インターネットの普及が人間行動と社会構造にもたらす変化に早くから注目しており、提言は多分野に渡っている。
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ネットの発達と普及で、国民の政治に対する関わり方が少しずつ変わってきたことは実感している。ネットにより、少数の送り手側が一方的に情報を発信し、大多数はただ受けるだけというこれまでの状況は崩れた。受け手側にいた人の一部が送り手側に回り、小さな情報の流れがつながっていくことで、社会全体の情報の流れが活性化していく。メディア・コンテンツ業界でも起きているこうした大きな構造変化と同じことが、政治の分野でもおこりつつある。
こうした状況に対し、現在の公職選挙法は対応できていない。遅ればせながら今回、改正の動きが出たこと自体は歓迎すべきだが、実現に至らなかったことは残念だ。とはいえ、今回の改正案でもツイッター自粛の方針となるなど、今の政治家は、全体として、国民自身が情報発信者となることに対する警戒感がまだ強いように思われる。
もちろん、国民からの情報発信が増えることが、必ずしも質の高い政治につながる保証はない。むしろそこは今後私たち自身が課題としていかねばならないが、少なくとも実態として、ネットの登場によって政治と我々の距離が近くなり、私たちの意見がよりダイレ クトに届くようになってきているのも事実であり、いまさら後戻りを考える状況ではない。新しい道具をうまく使い、よりよい社会を作るために、現在のやり方を少しずつでも見直していく必要がある。