EXPO70から上海万博へ―― 中国、新・富裕層たちのEコマース市場

2014年3月15日

日中アンケート比較

 筆者らの研究グループは、2006年初頭に日本と中国の電子商取引利用者を対象としたオンラインアンケート調査を実施した。
日本ではオンライン調査会社に登録する1107名の方を対象にした。中国では、新・富裕層向けの電子商取引サービスの会員651名の方を対象にした。両国とも主要な利用者層をターゲットにしているが、年齢層は実際の両国間の差異を反映して大きく異なる。日本のアンケートを原本として、これを中国語に翻訳してほぼ同じ内容で質問票を作成した。

 ほぼ同じというのは、日本と中国で意味が異なる用語があるためである。
例えば、代引きで受け取るといった場合、日本では宅配サービスの配達員に商品の代金を支払うことを意味するが、中国で代引きというと二つの意味がある。
一つは日本と同じようにデリバリー業者に商品代金を支払う方法であり、もう一つは消費者が事務所まで出向いて代金を支払う方法である。店舗で代金を支払うのでは対面の売買のようにも思えるが、商品の選択と注文の過程まではEコマースの画面を用いており、これも代引きと呼ばれている。

ニセモノと日本製

上海市内を行く中国人女性。日本製のファッション・化粧品が人気を集めている

 さて、日本と中国の調査結果を比較していくと、購入する品物の種類など一般的な質問ではそれほど差異が見られない。
最初に目を引くのが電子商取引を利用する理由である。
日本では、もっとも重視する理由として、実店舗よりも価格が安い(39.61%)、実店舗には売っていない商品がある(15.92%)と続き、カスタマーレビューを見られる(0.87%)は少数にとどまった。
対する中国では、価格が安い(30.45%)に次いで、カスタマーレビュー(21.53%)が高い支持を得た。その理由について、上海の調査会社の社長はこう説明する。
日本では電子商取引は安くものを買うための場所で、ゆえに不況に強い。上海の新・富裕層向けの電子商取引は、本物の日本製品が手に入る場として成長した。ゆえに好景気の強い需要に支えられる。

中国で売られている日本のファッション誌。2008年経済産業省調査によれば、人気ベスト3は『Ray』『ef』『ViVi』

 この説明が当たっているか、結果を読み進めてみよう。
電子商取引の商品選びで重視する事項として、日本では、価格(51.07%)、品質(28.45%)、購入者による商品の感想(5.44%)、ブランド(5.34>%)と続く。
これが中国では、品質(33.17%)、購入者による商品の感想(18.07%)、価格(16.83%)、ブランド(16.58%)と続いた。
このことから、中国の新・富裕層の会員が、ブランド品とくに日本の化粧品や家電製品を購入するために、カスタマーレビューやブランド表示を入念に読み込んで本物かどうかを見極めようとしている様子が窺われよう。

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